記事

査定額・売出価格・成約価格を分けて読む

公開日 / 編集: 村上祥太

査定額は、提示した会社に根拠や前提を聞く数字です。売出価格は販売するときに掲げる価格、成約価格は実際の契約で合意した価格で、3つは同じ数字として扱いません。届いた数字は、提示日・前提・どの段階の数字かを分けて記録します。

3つの数字が生まれる場面

売却の相談では、数字が出てくる場面が少なくとも3回あります。最初は査定の回答、次に販売を始める時の価格、最後に買主と契約を結ぶ時の価格です。どれも「いくら」という形をしているため、メモの同じ欄に書くと、後から見返した時にどの段階の数字だったか分からなくなります。

数字 誰が出す・決めるか いつの数字か 確認する相手
査定額 査定を依頼した会社が提示する 回答を受け取った日 提示した会社
売出価格 販売する時に掲げる。決め方は相談先と確認する 販売を始める時・見直す時 媒介を依頼する会社
成約価格 売主と買主が契約で合意する 売買契約を結ぶ時 契約の相手と、仲介する会社

表の「確認する相手」が段階ごとに変わる点に注目してください。査定額の理由を聞く相手と、契約で決まった価格を確認する相手は、必ずしも同じではありません。

届いた査定を読むときの確認メモ

高い査定額だけで相談先を決めず、比較した事例や販売条件を確認します。査定の回答を受け取ったら、数字を書く前に、その数字を支えている情報を聞き取ります。聞く項目は次の5つに絞ると、各社の回答を横に並べやすくなります。

  1. 根拠: どのような考え方でこの数字を出したか
  2. 前提条件: 室内を見たうえでの数字か、伝えた情報だけで出した数字か。前提にした物件の状態は何か
  3. 比較した事例: どの時期の、どのような条件の取引や売出しと比べたか
  4. 回答日: いつ時点の数字か
  5. 売出条件との関係: この数字で販売を始める前提か、販売の価格は別に相談するのか

根拠や事例を聞いても答えが短い場合は、答えが短かったことをそのままメモに残します。聞けなかったこと自体が、次の相談で聞き直す項目になります。

記入表の見本(空欄)

下の表は、自分で書き込むための空欄の見本です。実際の依頼者の事例や金額ではありません。会社ごとではなく、届いた数字ごとに1列を使うのがこの表の要点です。

書く欄 1つ目の数字 2つ目の数字
どの段階の数字か(査定額/売出価格/成約価格)
提示・合意した相手
日付
前提として聞いたこと(室内を見たか、物件の状態など)
比較した事例として聞いたこと
まだ聞けていないこと

同じ会社から2回数字が出た場合も、列を分けます。「前提として聞いたこと」の欄が違えば、数字が違う理由の手がかりになります。

公開されている取引価格の情報との違い

国土交通省は、取引の当事者へのアンケートをもとにした取引価格の情報を公開しています。2024年4月からは不動産情報ライブラリで取引価格・成約価格の情報を検索でき、制度の説明では、所在地は町・大字の単位、取引価格は有効数字2桁で提供されるとされています(国土交通省「不動産取引価格情報提供制度」、2026年9月14日確認)。

この情報は地域の取引の傾向を知る手がかりにはなりますが、番地や部屋、室内の状態までは分かりません。自分の物件の査定額としてそのまま使うのではなく、「相談先が比べた事例と、この公開情報の時期や条件はどう違うか」を聞く材料にします。

混同しやすい場面

  • 査定額をそのまま売出価格の欄に書いてしまう。売出価格は販売の条件と一緒に別の行へ書きます。
  • 前提の違う複数の査定を、数字の大小だけで並べる。前提と回答日の欄を先に埋めます。
  • 地域の取引価格の情報を、自分の物件の成約価格の見込みとして書く。公開情報は別のメモにし、出典と確認日を添えます。

複数の会社に同じ質問を渡したい場合は、相談用の質問メモで「査定の根拠を確認したい」を選ぶと、聞く質問を印刷できます。査定をまだ依頼していない場合は、査定の前と後で確認することから読んでください。

出典: 国土交通省「不動産取引価格情報提供制度」国土交通省 不動産情報ライブラリ「不動産価格(取引価格・成約価格)情報の検索・ダウンロード」(いずれも2026年9月14日確認)